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第13話 謁見のあとで

「ひどいよ、ミリィ様。僕にはああ言っておいて、自分はいたずらするなんて」 リートが抗議すると、エミリアは楽しそうに声をあげて笑った。 今のエミリアは礼装ではなく、あの夜と同じようなミモレ丈のドレスに、足元は足首まである深靴ブーツという出いで…

第12話 謁見の間で

(……どうしよう) 廊下を歩きながら、リートは今日何度めになるかわからないため息をついた。 リートは、王族に会うために謁見の間に赴いていた。 エミリアの言っていたことが本当だったとルイスが告げたのは、昨日のことだった。 ルイスによると、べつ…

第11話 決闘と王女

 困ったことになった。 リートは寝台の中でため息をついた。(騎士って、やっぱり名誉が大事なんだ) だが、そのために決闘するなんてどうかしているとリートは思った。 リートのいた世界では、私闘は禁じられていた。今どきそんなことをするのは、反社会…

第10話 クラウス

 ライナスと来たときよりも、聖殿への入り口は警備が厳しくなっていた。 事前に申請しなければ、部外者はいっさい入れないようになったらしい。 そんなことをしても意味がないのではないかという気持ちを、リートは抑えられなかった。今回のように、突然大…

第9話 本音と真実

 リートははっと目を覚ました。 昨夜のことがすべて夢のような気がした。あれからどうやって部屋に返ってきたのかまるで思い出せない。 もう辺りは明るくなっていたが、太陽の位置はまだ低く、少々肌寒かった。 リートは寝台から起き上がり、窓の外を見つ…

第8話 祈り

 寝台の中で、リートは布団を頭から被ったまま寝返りを打った。 ……眠れない。 あれからリートはずっと食事も摂らず、寝室に閉じこもっていた。 あのあとルイスとどうやって別れたのかもよく覚えていない。 今の状況を受け入れることを、リートの精神、…

第7話 拒絶

 ハーナル騎士団の庁舎では、だれもが事態の対応に追われ、忙せわしなく動き回っていた。その混乱のあいだを縫うように、一人の青年騎士が足早に歩いていた。淡い金髪にグレーの瞳を持つその青年の容貌は、だれもが振り向くほど端正で、人目を惹ひくものだっ…

第6話 襲撃

 それから二人は部屋を出て、聖殿に向かった。 リートは、自分が現れた場所にもう一度行ってみたいと思ったのだ。それにあの時は気が動転していてほとんど内部を見ていなかったので、もう一度よく見ておきたかった。 入り口には二人の衛兵が立っていた。 …

第5話 ここにいる理由

 次の日、リートはライナスが来るのを待っていた。 昨日、退出する前に、ルイスが明日の午前中は用があるので来られないとリートに言ったのだ。 代役をライナスに頼んでおいたと彼が言ったので、リートは少し嬉うれしくなった。 ノックの音とともにライナ…

第4話 王宮見学

 翌朝、リートはまたしても侍女に起こされたが、今度は支度を手伝われることはなかった。ただ、ずっと制服を着ているわけにもいかなかったので、用意されていた服に着替えることにした。 派手な服だったらどうしようかと思ったが、幸いにも用意されていたの…

第3話 ルイス

 次の朝、リートの機嫌は最悪だった。 昨日はあれからひどいことばかりだった。寝室でうとうとしていたところを侍女に起こされ、それが終わったかと思うと食べきれない量の夕食が出され、侍女に給仕されながら食事するはめになった。 おまけに給仕を断ると…

第2話 出会い

 リートはメルヒオルのあとについて、地上に続く螺ら旋せん階段を上った。 知りたいことは山ほどあったが、メルヒオルはなにも教えてくれるつもりはないようだった。 だが、そんなことはどうでもいいと思う自分もいた。あの世界にいなくてすむのならなんで…