第80話 リートの計略
リートは、ハーナル騎士団の庁舎にある中庭の長椅子に腰掛けて、ミヒャエルが来るのを待っていた。傍らには近衛騎士が立っている。 今は近衛騎士二人が交代でリートの護衛をしていた。 それは、ヴェルナーが責任を取って辞めると申し出たせいだった。 リ…
第81話 聴取
「聴取の内容はおまえが記録してくれ。おまえのことだから、速記もできるんだろう?」 庁舎に戻ったミヒャエルがルイスにそう言うと、ルイスが怪け訝げんな表情になった。「できるが、おまえの部下はアルフォンスだろう。頼めない理由でもあるのか?」 ミ…
第82話 愛がなくても
ルイスと別れて部署に戻った瞬間、騎士たちの視線が一斉に自分に集中したので、ミヒャエルは当惑した。しかし原因はすぐにわかった。 自室の前に、トリスタンが直立不動の姿勢で立っている。 それが意味することはひとつだった。 トリスタンが扉を開け、…
第83話 ライバル未満
「……ルイス」 エミリアはそれだけ言うのがやっとだった。 なぜ、よりにもよってこんなところを見られてしまうのだろう。 いつも自分たちは間が悪いことの連続で噛かみ合わない。 バツの悪い思いで固まっているエミリアとは対照的に、ミヒャエルはまった…
第84話 図書室で
「じゃあ、僕が字を読めるようになったのも君のおかげだったの?」 リートが目を丸くして言うと、エルフリードがうなずいた。「そう。言語だけ僕の記憶から取り出せるようにしたんだよ。君の世界にある外部記憶装置に接続するみたいにね。君の世界に行くまで…
第85話 相談
「ルイス……なんでここに」 リートがそう言うと、ルイスが近寄ってきた。「ミヒャエルに頼まれたんだ。仕事に必要だから調べてくれと。君こそどうして――」 しかし、ルイスは言葉の途中で突然はっとしたように周囲を警戒した。「どうしたの?」「いや、な…
第86話 最後の決闘
次の日の早朝、ルイスはいつも通り稽古を終えたあと、指定された場所でエミリアを待っていた。 勇気を振り絞って開けたにもかかわらず、手紙に記されていたのは日時と場所だけだった。 しかし、時間になってもエミリアはやって来なかった。 彼女は自分が…
第87話 前夜
メルヒオルは屋敷の客間で、客人と机を挟んで向き合っていた。「君がわたしの屋敷に来るなんてね。わたしは原稿の執筆をやめて、遺言状でも書いたほうがいいのかな」 客人の男がじろりとメルヒオルを睨む。「……どういう意味だ」「わざわざ君がわたしの屋…
第88話 再会
その頃、リートは落ち着かない気持ちでソファに坐っていた。 今日は婚約式が行われる日だ。 結局、どうしていいのかわからないままこの日を迎えてしまった。 「なんとかならないかな……」〈君が会場に乱入して王女を攫さらってきたら?〉 エルフリード…
16
2022.1
