第34話 作戦開始
その男の指は、長く繊細でほっそりとした形をしていた。 男の指が、馬をかたどった黒色硝ガラ子スの騎士の駒にかかり、白と黒の市松模様の描かれた盤上を滑るように移動させる。 男の服装は奇妙なもので、上は襟飾りからシャツ、胴着ベスト、上着、下は長…
RIHITO第4章 文章RIHITO
第33話 ルイスの懸念
「いいの? 本当に?」 エミリアの話を聞いても、驚いたことにメルヒオルは駄目だと言わなかった。「かまわないよ。わたしの窮地をみんなで救ってくれると嬉しい」 メルヒオルはそう言って穏やかに微笑んだが、リートは内心驚いていた。自分があの時間にル…
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第32話 ベギールデ
次の日の朝、リートは昨日の爆破騒ぎが王宮でどう取り沙汰されているかをルイスに聞いたが、事態はまだ動いていないようだった。それもこれも、ミヒャエルがその時間帯に自分たちがルーデル大聖堂にいたことを伏せてくれたおかげだとリートは思った。この事…
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第31話 ハーナルの捜査
「リート!」 ルイスがリートに覆おおい被かぶさった瞬間、再び辺りを強烈な爆風が駆け抜けた。 ルイスに庇かばわれたまま、リートは必死になって叫んでいた。「ルイス! 大丈夫?」 ルイスがライナスのようになってしまったらと思うとリートは気が気では…
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第30話 大聖堂で
しかし、出発したはいいものの、馬車の中では気まずい空気(そう感じていたのはリートだけだったが)が流れていた。 リートたちの向かい側に坐ったミヒャエルは、終始機嫌が良さそうに窓の外を眺めていたが、リートの隣ではルイスが腕組みをして瞼まぶたを閉…
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第29話 出発前
つまらない会合だ。 そう思いながら、ミヒャエルは目の前に並ぶ面子を観察した。 ミヒャエルの正面には、一人掛けのソファに坐すわったハインリヒがいた。そのすぐ横に縦向きに置かれた二人掛けのソファには、側近であるブロスフェルト卿と秘書のディート…
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第28話 主役の条件
「楽しんでいるかな、リート」「まあ、それなりに」 リートが言葉を濁すと、メルヒオルが苦笑した。「すまないね。君が人が大勢いる場所を好まないのはわかっていたんだが、これも必要な措置でね」「わかってます。それに僕はミヒャエルに接触してしまったし…
RIHITO第3章 文章RIHITO
第27話 ルーツィア
「こっちだ」 ルイスに導かれた先には、栗くり色いろの髪を結い上げ、ラヴェンダー色のドレスを着た痩身の若い女性が待っていた。 彼女の儚はかなげで繊細な面立ちを目にした瞬間、リートはまるで月のような人だと思った。「リート、彼女がルーツィア・フォ…
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第26話 交錯する思惑
(……やっぱり来なければよかった) リートは会場に到着してから後悔した。 大広間は人でごった返していて、人々の談笑する声が絶え間なくリートの耳に響いてくる。それに、こちらの様子をちらちら窺われている気配がして、リートは居心地が悪かった。 や…
RIHITO第3章 文章RIHITO
第25話 練習
「さっきはごめんなさい、リート。あなたの気持ちを考えずに先走って」 また衣装掛けが運び込まれた部屋で、エミリアはそう言ってリートに謝ってくれた。「いいんだ。ミリィ様は僕のことを考えていろいろ用意してくれたんだから」 リートがそう言うと、エミ…
RIHITO第3章 文章RIHITO
第24話 服選び
「損な役回りだったわね、お兄様」 二人が出ていったあとで、ガブリエレがそう言うと、ミヒャエルが茶器を片づけながら疲れたように笑った。「まったくだな。だが結果は上々だ。これでわたしは正々堂々と彼に会いに行ける」 ガブリエレはミヒャエルにさりげ…
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第23話 和解
足音がだんだん近づいてくる。「ミヒャエル!」 扉を蹴破るかのような勢いで現れた長身の人影に、ミヒャエルが笑いかけた。「遅いぞ、ルイス」 ルイスはこれ以上ないほど険しい目つきでミヒャエルを睨にらんでいた。 少年のように凛りんとした眉は吊り上…
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