第28話 主役の条件
「楽しんでいるかな、リート」「まあ、それなりに」 リートが言葉を濁すと、メルヒオルが苦笑した。「すまないね。君が人が大勢いる場所を好まないのはわかっていたんだが、これも必要な措置でね」「わかってます。それに僕はミヒャエルに接触してしまったし…
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第27話 ルーツィア
「こっちだ」 ルイスに導かれた先には、栗くり色いろの髪を結い上げ、ラヴェンダー色のドレスを着た痩身の若い女性が待っていた。 彼女の儚はかなげで繊細な面立ちを目にした瞬間、リートはまるで月のような人だと思った。「リート、彼女がルーツィア・フォ…
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第26話 交錯する思惑
(……やっぱり来なければよかった) リートは会場に到着してから後悔した。 大広間は人でごった返していて、人々の談笑する声が絶え間なくリートの耳に響いてくる。それに、こちらの様子をちらちら窺われている気配がして、リートは居心地が悪かった。 や…
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第25話 練習
「さっきはごめんなさい、リート。あなたの気持ちを考えずに先走って」 また衣装掛けが運び込まれた部屋で、エミリアはそう言ってリートに謝ってくれた。「いいんだ。ミリィ様は僕のことを考えていろいろ用意してくれたんだから」 リートがそう言うと、エミ…
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第24話 服選び
「損な役回りだったわね、お兄様」 二人が出ていったあとで、ガブリエレがそう言うと、ミヒャエルが茶器を片づけながら疲れたように笑った。「まったくだな。だが結果は上々だ。これでわたしは正々堂々と彼に会いに行ける」 ガブリエレはミヒャエルにさりげ…
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第23話 和解
足音がだんだん近づいてくる。「ミヒャエル!」 扉を蹴破るかのような勢いで現れた長身の人影に、ミヒャエルが笑いかけた。「遅いぞ、ルイス」 ルイスはこれ以上ないほど険しい目つきでミヒャエルを睨にらんでいた。 少年のように凛りんとした眉は吊り上…
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第22話 ミヒャエルの屋敷
ミヒャエルの屋敷は、リートが想像していた貴族の大邸宅とは違ったが、とても洒しゃ落れた屋敷だった。重厚さはまったくなく、明るくて開放的な雰囲気で、二階にある居間には趣味の良い調度品や家具が並んでいる。 彼が手ずから紅茶を淹れたのでリートは驚…
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第21話 誘い
翌朝、リートは侍女が自分を起こす声で目が覚めた。考え事をしながら眠ったせいで頭が重かった。「どうしたの?」 半分寝ぼけたままリートが声を出すと、侍女が頭を下げた。「シェーンドルフ卿がお見えです」 ミヒャエルのことだとわかった瞬間、ぼんやり…
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第20話 ミヒャエル
「いい天気ですね、リート様」 ヴェルナーが気軽な調子でそう言った。「そうだね……」 リートが力なくそう返すと、ヴェルナーがからりと笑った。 彼の笑顔は、今の晴れ渡っている空と同じくらい明るく、開放感に満ちていた。「そんなに心配しなくても大丈…
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第19話 エミリアの憂鬱
「宴の日取りが来週に決定した」「そう」「行きたくないか?」 リートはルイスに苦笑いしてみせた。「人が大勢いるのは疲れるだろうなと思って」「わたしも乗り気はしない。だが個人的にリートには出てほしいと思っている」 そう言ってルイスはいつも以上に…
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