RIHITO第4章

第39話 決別

 リートたちを見送ったあと、ミヒャエルは扉を閉め、執務机に向かって歩を進めた。 椅子に坐ったまま、こちらの様子を窺うかがっているハインリヒと、ミヒャエルは机を挟んで向かい合った。「閣下。天啓者の件はお断りします」 ミヒャエルが単刀直入に言う…

第38話 ミヒャエルの謎解き

「殿下、お待ちください!」 秘書官の制止を聞かず、エミリアは扉を開けて中に入った。リートたちもそれに続く。「なんだ、騒々しい。今日の面会の予定はすべて断ったはずだぞ。無礼な人間は即刻帰らせろ」 ハインリヒが不機嫌な声で言いながら、読んでいた…

第37話 ハーナルの騎士団長

 リートとエミリアは、王宮の入り口の所でルイスとミヒャエルの帰りを待っていた。 二人の周りには、トリスタンとほかの近衛騎士たちが控えている。「ほんとに、二人はここに戻ってくるの?」「そのはずよ。ミヒャエルがルイスの言うことを聞いていればだけ…

第36話 罠

 自分を信じること。それがどういうことなのか、今までリートはよくわからなかった。だが、今は少しだけわかる。大事なのは、だれかの教えに服従することではなく、自分の感じ方と考え方を大事にすることなのだと。「だから、僕はあなたたちの言うことを信用…

第35話 潜入

 ミヒャエルとルイスが足を踏み入れた建物は、外観こそ教会のようだったが、中はまるで違っていた。 ミヒャエルは注意深く辺りを観察した。 入ってすぐの所に、酒場のような細長い天板机が設置されている。ここでだれかが訪れた人間となにかやりとりをする…

第34話 作戦開始

 その男の指は、長く繊細でほっそりとした形をしていた。 男の指が、馬をかたどった黒色硝ガラ子スの騎士の駒にかかり、白と黒の市松模様の描かれた盤上を滑るように移動させる。 男の服装は奇妙なもので、上は襟飾りからシャツ、胴着ベスト、上着、下は長…

第33話 ルイスの懸念

「いいの? 本当に?」 エミリアの話を聞いても、驚いたことにメルヒオルは駄目だと言わなかった。「かまわないよ。わたしの窮地をみんなで救ってくれると嬉しい」 メルヒオルはそう言って穏やかに微笑んだが、リートは内心驚いていた。自分があの時間にル…

第32話 ベギールデ

 次の日の朝、リートは昨日の爆破騒ぎが王宮でどう取り沙汰されているかをルイスに聞いたが、事態はまだ動いていないようだった。それもこれも、ミヒャエルがその時間帯に自分たちがルーデル大聖堂にいたことを伏せてくれたおかげだとリートは思った。この事…

第31話 ハーナルの捜査

「リート!」 ルイスがリートに覆おおい被かぶさった瞬間、再び辺りを強烈な爆風が駆け抜けた。 ルイスに庇かばわれたまま、リートは必死になって叫んでいた。「ルイス! 大丈夫?」 ルイスがライナスのようになってしまったらと思うとリートは気が気では…

第30話 大聖堂で

しかし、出発したはいいものの、馬車の中では気まずい空気(そう感じていたのはリートだけだったが)が流れていた。 リートたちの向かい側に坐ったミヒャエルは、終始機嫌が良さそうに窓の外を眺めていたが、リートの隣ではルイスが腕組みをして瞼まぶたを閉…

第29話 出発前

 つまらない会合だ。 そう思いながら、ミヒャエルは目の前に並ぶ面子を観察した。 ミヒャエルの正面には、一人掛けのソファに坐すわったハインリヒがいた。そのすぐ横に縦向きに置かれた二人掛けのソファには、側近であるブロスフェルト卿と秘書のディート…