RIHITO

第46話 地下での遭遇

 逃げ惑う人々の中で、ルイスとルーツィアはなんとか移動しようとしていた。「ルーツィア!」 繋つないでいた手が離れ、人波に浚さらわれそうになったルーツィアをルイスは抱き寄せた。ぶつかられ、揉もみくちゃにされながら二人はやっと群衆の中から抜け出…

第45話 ユーリエの部屋

 ゾフィーが扉をノックする。「ユーリエ、天啓者がいらっしゃいましたよ」 そう言ってからゾフィーは扉を開けると、長くなりすぎないようにとくぎを刺し、リートを中に促した。 入った瞬間、リートは拍子抜けした。 なんとも無機質で殺風景な部屋だ。 リ…

第44話 気づきと誘い

「……ルーツィア」「はい」 ルイスに名を呼ばれ、ルーツィアが歩きながら顔を上げる。「……わたしは大人気ないな」 ため息交じりにルイスがそう言うと、ルーツィアは微笑んだ。「いいえ。ありがとうございます。守っていただいて」「君がそう思ってくれて…

第43話 前夜祭当日

 前夜祭の当日、リートは億おっ劫くうな気持ちで一日中ソファに寝転がっていた。 まるで行く気になれない。 そろそろ支度しなければならない時間だったが、まったくと言っていいほどやる気が起きなかった。 だが土壇場でやめるわけにはいかない。なにせ劇…

第42話 血まみれのエヴェリーン

 メルヒオルの部屋の前で、リートは深呼吸した。 ただ頼み事をするだけだ。怖くても、恐れる必要はない。 リートは緊張しながら部屋に入ったが、そこには先客がいた。髪も髭ひげも見事に白い老年の男がソファに坐っている。確か宴のときに見かけた人物だ。…

第41話 歌劇への招待

「結局、今回の件はディートリヒが爆破の犯人で、それに気づいたイェンスが口封じのために殺されたということになった」 ミヒャエルが復帰し、リートの部屋にはいつもの四人が集まっていた。「ブロスフェルト卿きょうはハーナルの担当からは外れたけれど、そ…

第40話 食事会

「いやー、楽しみだなー」 そう弾んだ声を出すヴェルナーに、リートは思わず笑っていた。「嬉うれしそうだね」「だって、あのガブリエレ様に会えるんですよ? こんな機会は滅めっ多たにありません」 リート、ルイス、ヴェルナーの三人は、ミヒャエルの屋敷…

第39話 決別

 リートたちを見送ったあと、ミヒャエルは扉を閉め、執務机に向かって歩を進めた。 椅子に坐ったまま、こちらの様子を窺うかがっているハインリヒと、ミヒャエルは机を挟んで向かい合った。「閣下。天啓者の件はお断りします」 ミヒャエルが単刀直入に言う…

第38話 ミヒャエルの謎解き

「殿下、お待ちください!」 秘書官の制止を聞かず、エミリアは扉を開けて中に入った。リートたちもそれに続く。「なんだ、騒々しい。今日の面会の予定はすべて断ったはずだぞ。無礼な人間は即刻帰らせろ」 ハインリヒが不機嫌な声で言いながら、読んでいた…

第37話 ハーナルの騎士団長

 リートとエミリアは、王宮の入り口の所でルイスとミヒャエルの帰りを待っていた。 二人の周りには、トリスタンとほかの近衛騎士たちが控えている。「ほんとに、二人はここに戻ってくるの?」「そのはずよ。ミヒャエルがルイスの言うことを聞いていればだけ…

第36話 罠

 自分を信じること。それがどういうことなのか、今までリートはよくわからなかった。だが、今は少しだけわかる。大事なのは、だれかの教えに服従することではなく、自分の感じ方と考え方を大事にすることなのだと。「だから、僕はあなたたちの言うことを信用…

第35話 潜入

 ミヒャエルとルイスが足を踏み入れた建物は、外観こそ教会のようだったが、中はまるで違っていた。 ミヒャエルは注意深く辺りを観察した。 入ってすぐの所に、酒場のような細長い天板机が設置されている。ここでだれかが訪れた人間となにかやりとりをする…