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第58話 開かないオルゴール

ルーツィアの部屋の前でルイスと別れ、リートはルーツィアと部屋に入った。 ルーツィアがリートに手ずから紅茶を入れてくれたのでリートは驚いたが、彼女は召し使いを置かずに一人で暮らしているのだとリートに説明してくれた。「ルーツィアのお父さんはここ…

第57話 避難

 エミリアが菓子を片手に不機嫌そうな顔で言う。「それで、どうしてルーツィアが狙われなきゃいけないの? この件に直接関係ないのに」 いつものように、リートの部屋にはエミリアが来ていた。 アルベリヒの屋敷に行ってから、丸一日が経とうとしていた。…

第56話 光と影

「例えば、あれはなにに見えます?」 アルベリヒが視線で示したのは、部屋の奥に飾ってある金色の物体だった。 前足を高く上げて嘶いななく馬に、人が騎乗している。「像だろう」「絵だ」 同時にそう答えたミヒャエルとルイスは、互いに顔を見合わせた。「…

第55話 招待

 その機会は唐突に訪れた。 リートがいつものように部屋でエミリアと談笑していると、そこに突然ミヒャエルが緊張した面持ちで訪ねてきたのだ。「アルベリヒが屋敷に招待してきた」 前置きなしでそう言ったあと、ミヒャエルが黒い封筒を卓の上に投げた。 …

第27話 再び図書館で

 どうすればいい? シュンは何度めになるかわからないため息をついた。 シュンは久しぶりに図書館に来ていた。メグと顔を合わせるのが気詰まりで、ひとりで外に出かけたのだ。 あの日からずっと、シュンはまともにメグと口を利いていなかった。 自分がリ…

第26話 拒絶

(お願い、瞬) 裸のメグがシュンに囁く。(でも、俺は……) できない。 だって俺は、君を愛していないから。 シュンは瞼を開けた。 眠っていたのか判然としないまま、気づけば朝になっていた。 夢なのか妄想なのかもわからない。 けれど、そんな淫ら…

第25話 シュンの秘密

 メグの部屋に入ると、シュンは落ち着かない気分で床に敷いてあるクッションに坐りながら言った。「それでさっきの、どういう意味? 俺に向こうに行く資格があるって」「あなたには資格があったのに、こちらの都合で招待されなかったの」「都合って……間違…

第24話 嫉妬

〝難しすぎる!〟〝ほかの子たちとは仲良くなれたし、帰りたくないって言ってくれたけど、この子は約束の期限になる前に帰っちゃうんだよね。作者はなんでこんな子を作ったんだろ〟〝ほんと意地悪だよ。何回挑戦してもうまくいかないから、時間を忘れて課金し…

第23話 半年後(2)

 会計を済ませて店の外に出たとき、メグがいいことを思いついたという表情でシュンを見た。「そうだ、どこかでお菓子を買って、家でお祝いしましょう」「え、いいよ、そんなの。さっきデザート食べたし」「わたしがそうしたいの」 メグがどうしてもと言って…

第22話 半年後(1)

 砂時計の砂が落ちきったのを確認してから、シュンはティーポットから紅茶をカップに注いだ。「メグ、できたよ」 シュンが茶器の載った盆をテーブルに置いてから声をかけると、リビングで携帯電話をいじっていたメグが嬉しそうにソファから立ちあがった。 …

第21話 君の好きなところ

「……だめだ。全然売れない」 シュンは公園のベンチでがっくりと肩を落とした。 何度か改良しても、SNSで宣伝しても、ゲームのダウンロード数はまったく増えなかった。「デートだって、最近は君とこうやって鯛焼き食べてるだけだし」 そう言いながら、…

第20話 デートしてみる(2)

 シュンたちが歩いている大通りは、駅に向かう人間たちで混雑していた。 歩道の右側には等間隔で街路樹が並び、左側には高層ビルが並んでいる。 メグは歩きながら、興味深げに周囲を観察していた。「人がいっぱい。今日はお祭りでもあるの? いろいろ配っ…